2015年2月28日土曜日

お嬢さんと僕

はじめから勝負は付いていた。住む世界がまるで違ったのである。彼女はエリート音楽一家のサラブレッドであり、マルちゃんの正麺を食べて喜んでいる僕では勝負になる筈もなかった。

ネットで承認欲求を満たしたがる女性たちすら振り向かせることが出来ないこの男が、果たして音楽一族の末裔である音大生と付き合うことなど出来るのだろうか。金もないし、コミュ力もないこの身長163センチ体重75キロの冴えない男に希望はないのか。

そんなことを考えてはいたものの、彼女の演奏を聴いているとどうでも良くなってきたんだよな。素敵な女性と知り会うことが出来ただけでも光栄だよ。終演後、彼女は自分に挨拶をしに来てくれて嬉しかった。髪はエレガントな雰囲気に合った巻き髪だった。それだけで十分だよ。僕には、ピアノの演奏で終演後に挨拶をしに来てくれる可愛い子が付いている。十分じゃないか。付き合うとか結婚なんてものははるかその先にあるけれども、今は目の前の喜びを噛みしめることが先決じゃないかな。好き。

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